癌と共に~フーテンのパパちゃん~

大好きな父が癌になりました。クジラを見に行く日を夢見て🌈

胃がんからの旅立ち~偲ぶ心のお弁当~

 

目が覚めて我に返る

 

静かな部屋が

夢ではなかったことを

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~葬儀後 皐月~

朝。起きてご飯を作り、洗濯をして、掃除をして。

また変わらない1日が始まる。

 

次男も新聞配達を1日だけお休みを延ばしたが、次の日から復活した。

だが学校は変わらずコロナで自粛。

しばらくは主人も忌引きで休みとなる。

 

家族はみんな家に居るが、お弁当作りもなく、動きのない日々だった。

 

 

2日後に、葬儀に間に合わなかった従妹が中部から来てくれた。

わずかな時間だが私たちとも一緒に住んだこともあり、パパちゃんのこともずっと大切にしてくれていた。

娘さん一家を連れてお線香をあげてくれた。

『おっちゃん、間に合わんでごめんね』

そう言いながらも仕事柄人の生死と隣り合わせで過ごしてきたこともあり、明るくしてくれるのがかえって嬉しかった。

『みんなに看取られて、これ以上幸せなことはないよ』そう言ってくれ、たくさん励ましてもらった。

 

せっかく来てもらったので、何か美味しいものをと考え

葬儀の日に読経してもらったパパちゃんの友人を思い出した。

昔からレストランを経営されているのだが、とても美味しいことで有名だ。

姉たちにも是非食べてもらいたかったのでお願いすると、快く引き受けてくれた。

 

お昼、届けてもらったお弁当は名物のとんかつに魚のフライ、煮物にサラダ、とにかく食べきれないほどの内容。

写真の説明はありません。

特にこのトンカツ、SPF豚と言われる特別な豚と菜種油を使ってあり、全然脂っこくない上にめちゃめちゃ柔らかい。

味にうるさい長女が大感激していた。

 

なにより驚いたのが

『初七日 パパちゃんさんを偲んで』と一つづつメッセージがつけられてあったこと。

達筆なマスターの字。優しさが伝わってきて、涙が出た。

 

みんなで美味しく頂き、昔話に花が咲く。

 

そんな中、主人は黙って出かけて行った。

自分が話の中心にいないのが面白くないのだ。

「どうぞごゆっくり」などの言葉もなく。

「あれ、なんか気を悪くしたかな」と気遣う従妹たち。

葬儀の時からもめていたことを、従妹には話した。

 

大人の対応。

自分本位ではなく、周りの人のことを考えること。

一番大変な人、辛い人の気持ちを汲んで寄り添うこと。

 

私が願うことは、そんなに難しい事なのだろうか。

 

 

後日、従妹から

『どんな道を選んでも、あなたを守り応援する人がたくさんいるから』

と力強い言葉をもらった。

 

ありがとう😂

 

 

パパちゃんを慕うたくさんの人たちが

残った私たちを支えてくれていた

 

 

胃がんからの旅立ち~パパちゃんのいない夜~

目を開けても

あの背中が見える

 

目を閉じても

低く呼ぶ声が聞こえてくる

 

ぽっかりと開いた和室の向こうには

パパちゃんの笑顔

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~葬儀の後~

精進揚げも終わり、気づけば夜だった。

 

「あんたも頑張ったね。疲れたろ。ゆっくりお休み」

姉たちも気遣ってくれ、パパちゃんへお線香をあげてからそれぞれの家に帰っていった。

 

ひとまずお風呂に入り、その日は早くにみんな2階へ。

 

私は一人和室で、ぽつんと残っている介護ベッドに腰かけた。

 

「せっかく取り寄せたのに、2日間しか寝れなかったね」

 

『おぉ。もう少し使ってみたかったな』

 

「昨日からずっとバタバタだったから、くたびれたろ」

 

『うん。俺はなんもしとらんのだけどな』

 

「明日からはね、みんなお休みよ」

 

『お前もゆっくりできるな。・・・おい、アイスはあるか』

 

 

冷蔵庫に行き、いつもパパちゃんが食べていたアイスを食べる。

ドールのフルーツバー。

これがお気に入りだった。

 

しゃりしゃりしゃり。

 

おいしいなぁ

 

 

ぼんやりとパパちゃんの写真をながめながら

そのまま布団を持ってきて、横になった。

 

2階に、行きたくなかった

 

パパちゃんの側に、いたかった

 

 

この数日間を振り返って考える。

 

よくやった

私なりに

精いっぱい

 

それでもパパちゃんへは足りないことばかりが思い出される。

 

もっと美味しいものを食べさせたかった

いろんな所へ連れて行ってあげたかった

たくさんの人に会わせておけばよかった

もっと話をしたかった

 

たくさんのもっともっとを考えながら

それでも朝起きたら全部夢だったらいいのにと思いながら

眠った。

 

  

胃がんからの家族葬~パパちゃん、おうちに帰る~

お疲れさま

 

くたびれたね

 

さぁ、帰ろう

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~火葬後 精進揚げ~

葬儀社の男性スタッフが、親戚へ配る花束を持って戻ってきてくださった。

 

お手数かけました💦

当初は葬儀プランであまりいい感じではない人だったが、

すっかりいい人へランクアップしていた。

 

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少々寄り道をするため、時間を合わせて自宅でまた落ち合う約束をして、葬儀社のスタッフとは一旦お別れ。

 

そこから一路、従兄の家を目指した。

 

ちょうど皆お仕事に出ていたが、小学生の娘さんが出てきてくれた。

まぁこの女の子が小学生とは思えないほど、しっかりした子で落ち着いている。

一番小さい子の世話も上手で、とても気が付くしすごく優しい。

もう娘のお手本みたい❤

 

ピアノが上手で、パパちゃんが演奏会に喜んで聞きに行ったことも。

孫に女の子がいないのもあって、可愛くて仕方がないようだった。

 

パパちゃんの最期、またお通夜の時は小さい子がいるため気を使ってお留守番をしてくれていた。

 

だから、会わせてあげたかった。

 

桐の箱に居るパパちゃんと遺影の写真を持って

お花を渡した。

 

心臓で入院した時も、リハビリの時も、会いに来てくれてたね。

 

ありがとう。

パパちゃん、嬉しかったよ。

 

 

そこから帰り道に、和食のレストランに頼んでおいたお弁当を取りに寄った。

 

そこは病院で「もう抗がん剤治療はしません」と言われた帰りにパパちゃんと寄ったレストラン。

大好きな貝汁目当てで行ったけれどなくって

カニ入りの味噌汁を美味しそうに食べてたなぁ

 

そんなことをぼーっと考えながら、家に着いた。

 

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既に葬儀社の方が来ていて、お部屋に後飾り祭壇を作ってもらう。

銀色の段ボールをテキパキと組み立てていく。

乗り切れないほどのお供え物をセット。

 

 

四十九日まではここがパパちゃんの居場所となる。

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たくさんのお花に囲まれてパパちゃんが笑っていた。

 

 

お帰り、パパちゃん。

 

 

葬儀に関するガイドブックや

引き出物、挨拶状やら一式を受け取り

「いつでもご相談ください。今日はゆっくり休まれてくださいね」と言って帰って行かれた。

 

この方は、葬儀の後ひと月した頃だろうか。

パパちゃんへお花を届けに来てくださった。

本当に嬉しかった。

葬儀代にしても後日女性の担当者へ連絡を入れたが、

「いつでもいいですよー」と慌てることもなく、引き続き四十九日の引き出物や初盆などずっと相談に乗っていただいた。

 

ここの葬儀社にして、本当に良かったとつくづく思う。

親身になって良くしていただいた。

私の時にもぜひともお願いしたい✨

 

 

 

だけれどまだ仕事が残っている💧

 

無事戻ってきた報告をしないと、義実家は納得しない。

形だけでも葬儀を遠慮してもらった事へお礼を言わないと。

 

もう正直どうでもよいが、主人の手前さすがに無視するわけにもいかず。

 

葬儀社に作ってもらった花束を手土産?に義実家へ。

お花は気をそらすための必須アイテムだ。

疲れていて可哀そうだったが、姉たちにも同行をお願いした。

もちろんいい気はしない。

「私たちは、謝らないからね。後ろに立ってるだけでいいなら」と

それでも一緒に来てくれた。すまん。

 

一つは私だけなら呼び込まれて延々と恨み節を聞かされる可能性を避けるため。

 

「お父さんを亡くしたばかり」なんて配慮は彼らにはない。

 

なので子どもたちも全員、姉たちも連れて義実家へGO。

 

超ウルトラ不機嫌な義母と義父。

それでもお花を見ると喜んだ。

 

ちょろい。

 

ここら辺では葬儀の後、献花を参列者が自由に持って帰ってよい。

それは別にいいと思うのだが、そのお花の取り方が

ものすごくえげつない。

 

バーゲンに群がる人のごとく、押し合いへしあい

我先にとお花を引っこ抜いていく。

その様はとても葬儀後のものではない。

 

通常もうご遺族は火葬場へと向かっているので居ないことがほとんどだが

それでもあの状況は私にはすごく不快だった。

 

斎場スタッフがまとめてくれるところもあるのだが、

「いい、いい。自分たちでするから」と乱暴に引っこ抜いていく人たちがほとんど。

 

毎回、なんだろな-と呆れてしまう。

 

そんなこんなで

葬儀後のお花を渡せば喜ぶことも計算のうちだった。

 

『あらあら大変だったわねー』という義父母に

「おかげさまで無事葬儀を終えることが出来ました。すみません、色々お気遣い頂いてありがとうございました。」

 

大人だからね

それくらいは言うよ

 

『本当にね-私たちもお別れしたかったわ-』と嫌味ったらしい義母の言葉はスルーして「お義兄さん達は?」と聞くと2階にいるらしいが降りてもこない。

仕方がないので階下からお礼の言葉をかけるとあ゛―の返事。

 

そうか、そうか。いいよ、私は構わんよ。

 

自分がしでかした不祥事の数々は棚上げし

「長兄」という権限だけ振りかざす人など、こちらから願い下げだ。

 

ちゃちゃっと手短に挨拶を済ませ、義父の本家へ。

 

叔父夫婦も葬儀に呼んでもらえなかったことで、義実家に文句があったと聞いている。

だが『すみません、子どもだけで静かに送りたかったので』というと

叔父夫婦は『うんうん、みんなで見送れたならお父さん喜んでるよ。コロナのこともあったからね』と優しく言って頂いた。

あれ?聞いてた話と違うんだけど。

 

お花を渡すと

『わーごめんねぇ、気を使ってもらって』とこちらは大人の対応。

 

これが当たり前だと思うのだが。

 

みんなはそこで家に戻ってもらい、私だけでご近所を廻った。

出棺前に自宅に来ていただいた方達へお礼とお花を持って。

皆さん喜んでくれたので、良かった。

 

なんだかんだで帰ってきたのが夕方5時過ぎ。

 

「ミッション完了!!!」

 

 

買ってきたお弁当をひろげ

「お疲れさまでした!」と精進揚げにした。

 

いやもう本当に疲れました・・・

 

みんなほぼ無言で食べてたもんねぇ。

 

 

隣の部屋から

「お前は本当にようやるよ」

いつものパパちゃんの声が聞こえてきそうだった。 

 

胃がんからの家族葬~いかつい骨骨ロック~

 

ほんとカルシウムはね、大事。

 

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~火葬場にて 続き~

パパちゃんが空へと昇りつつある間、私たち家族は控室で待つ。

2時間くらいと、聞いていた。

 

私たちと一緒に、パパちゃんの遺影も席に着く。

虚無感でいっぱいになってくる。

 

そんな時、長男がいたわるように長女と次女を抱きしめていた。

 

嬉しかった。

 

小さい時から、とてもとても優しい子。

何かあっても自分がガマン、というタイプ。

いつもニコニコしているので、何も考えてない楽天家と思われがちだが、

その実とても人を観察している。

 

本当にきつい時、苦しい時には、

いつもすっと寄り添ってくれる子だ。

 

長女と次女がもういっぱいいっぱいになっているのが、分かったのだろう。

よしよし、と優しく背中をトントンしていた。

 

パパちゃんは彼の優しすぎる性格を心配もしていたが、

私から見ればパパちゃんそっくりだと思う。

 

今日はスーツを着て、一段と大人に見える。

 

パパちゃんも、少しは安心してくれるだろうか。

 

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斎場のスタッフが1人ついてくださっていて、

私たちにお茶やコーヒー、子ども達にはジュース、他にもお菓子を出したり

パパちゃんにもお供えを別に用意したりと、甲斐甲斐しく世話をして下さった。

 

細かく気を配られる方で、こちらが恐縮してしまうほど。

贈答用の和菓子の詰め合わせまで用意してあるのにはびっくりした。

 

さすがに少し気が抜けて、みんなぼお-っとしていた。

 

混雑しあう待合室の中で、次女に声をかけてくる方がいた。

なんと子どもの学校のママ友だった。

しばらくして今度は主人にお声がかかる。

こちらは会社の知人の方。

こんな偶然もあるのだなぁ~

 

そんなこんなで1時間半ほどたった頃、館内放送でお呼びがかかり、先ほどの小部屋へ再度集まった。

 

お骨になったパパちゃん。

 

いや、ゴツイな( ゚Д゚)

 

小柄で40kgしかなかったので、正直ちんまりとしたイメージだったのだが

最期は理科室に置いてある標本くんにも負けないほど、がっしりして登場。

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「すげー」

 

みんな思わず言葉に出た。

 

いや、もう本当にしっかりしてるのよ。

 

キレイに全形が残っているというか。

 

ママちゃんの時は、骨粗しょう症もあってスカスカだった(ごめん)

 

骨壺に入れるのも気を使うほど、もろかった。

 

パパちゃんは「どうや」と言わんばかりにデデン!としている。

 

あまりの立派さに笑いが出た。

 

 

そういや、エビやカニなど甲殻類が大好きだったパパちゃん。

エビなどは、殻ごと焼いたり煮たりしたものを、よくそのままバリバリ食べていた。

 

さすがだ。

 

悲しさいっぱい、という雰囲気から

「パパちゃん、スゴイねー!」というなんだか明るいモードになった。

 

 

係員の人から説明を受けて、私と長女でお骨を拾い、骨壺へと納めていく。

この一緒にすることを『箸渡し』という。

これから渡る三途の川を無事に渡ってほしいという、『橋渡し』の願いもこもっているのだとか。

 

一巡した後は、各々で収骨をしてもらう。

 

この骨壺も、地域で大きさが違う。

パパちゃんのは一部収骨の6寸タイプ。

東日本は全部収骨の7寸が多いのだそう。

 

それでもけっこう大きい骨壺に、足元の方からなるだけキレイなものを入れていく。

 

足、大腿骨、腰骨、胸骨。

骨がしっかりし過ぎて、入れるのも一苦労(笑)

「どやっ」と言わんばかりに各パーツが太くてむちゃむちゃ堅い。

隙間を埋めてたくさん入れたいのだが、崩れてくれない。

「えい、えい」と姉たちと頑張るのだが、びくともしない。

 

パパちゃんの頑固さが感じられ、なんだかおかしくなる。

仕方ないので、細かいお骨で埋めていく。

 

途中、心臓に入れたステントや、歯に詰めた銀歯などが出てきた。

 

感慨深くなり、ついつい一緒に納めてしまったが、後々別にしておけばよかったと思った。(もし後で散骨などの手続きをする方は、入れないほうが無難です。不純物とみなされ除去されますが、業者によっては有料とするところもあります)

 

 

骨壺いっぱいにパパちゃんを戻し、最後に喉仏をそおっと置く。

 

 

桐箱に入れてもらい、渡されたパパちゃんを抱きかかえる。

 

とても、とても重く感じられた。

 

 

 

 

胃がんからの家族葬~空に昇る~

フーテンのパパちゃん

 

風に乗って

 

自由の旅へ

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~火葬場にて~

火葬場へ到着した時に、あっと思い出すことが。

 

出棺前に献花や祭壇で使ったお花を、花束にしてもらっていた。

あとで親戚へ配るため、家に届けてもらうよう話していたのだが

従兄の家だけが離れていて、火葬場からの帰り道にあたる。

 

しまった。

持ってきていない。

 

私の慌てた様子に気づいた葬儀社のスタッフが

「どうかしましたか?」と。

斎場からここまではかなり離れている。

にも関わらず、事情を話すと「すぐ戻りますから!」と飛んで帰ってくださった。

 

ごめんなさいぃ―( TДT)

 

火葬場の玄関では別の女性スタッフが待機してくれていた。

霊柩車の後に続いていた主人と次女の車も到着し、パパちゃんを乗せた柩を先頭にみんなで中に入る。

 

火葬炉ごとに小さなお部屋がある。

そこへ安置し最期の読経を上げた。

そして火葬炉へ

 

 

母の時を、思い出していた。

あまりにも急だった母の死は、遠く暮らしていた私には夢のようで。

対面してもお通夜をしても葬儀をしても実感がなく

現実味を帯びたのがなんと火葬場に来てからだった。

『だめ、焼いたらだめ』と炉に入れる時に周りを困らせてしまった。

 

そして動揺する私と終始泣き崩れる次女の横で

長女が一人静かにスイッチを押した。

 

今考えれば、なんと残酷なことをさせたのだろうと思う。

 

火葬場のスタッフの方から

「それでは点火のスイッチを押していただきます。喪主様、またご家族さまご一緒にでも構いません。」

長女は泣きながら懸命に首を振っていた。

ママちゃんの時には姉一人に任せてしまった。

なのでパパちゃんの時は、私と次女でスイッチの前に立った。

 

それなのに何も知らない主人が

「ほら、ほら姉ちゃんも!」とぐいぐい背中を押す。

 

やめろ

何も知らないくせに

 

「お姉ちゃんはいい」

そういって二人でスイッチを押した。

 

 

 

この日は雲一つない、快晴だった。

 

昇っていくパパちゃんを見ようと煙突を探したが、ない💦

係員さんに聞くと環境面の配慮から、もう煙突はないとのこと。

地下に通したパイプへ流れていくのだそう。

 

わ-なんだか寂しいわ-(;´・ω・)

 

 

5月の半ば。まだあちこちで鯉のぼりがたなびいている。

 

風になり自由になったパパちゃんを

お見送りしてね

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胃がんからの家族葬~出棺~

二人で過ごした日々

 

楽しかったね

毎日笑ってたね

 

この道を通るたびいつも思い出す

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~出棺~

読経の後は私たち家族だけのため挨拶などは抜きにした。

葬儀社のスタッフが柩に入れるお花を用意し、その間に私たちも荷物をまとめ火葬場へ向かう準備をする。

 

「では、最期のお別れを」

 

スタッフに促され、パパちゃんの思い出の品を柩に納める。

 

お出かけに絶対欠かさない帽子は、長男と次男がかぶせてあげた。

大好きなニャンコとわんこの写真は、甥っ子が胸の上にそっと置いた。

 

長女が漬物を持たせ

柩の中には釣り竿もある。

 

さぁ、パパちゃん大好きな釣りに行けるよ

 

ずっとずっと行きたかったもんね

 

「ちきしょう、情けねぇな」

筋力や体力を失い、だんだん動かなくなる足や体が歯がゆくて

よくそう言ってたね

 

もう、自由だよ

 

どこへだって行ける

 

胸も苦しくない

 

足場の悪い岩場だって

少し高い防波堤だって

 

昔みたいにひょいひょいって行けるよ

 

 

みんなで

「パパちゃん」

「じいちゃん」

「おとうさん」

声をかけながら

お花を入れ続けた

 

それはそれはたくさんの

彩とりどりのきれいなお花に囲まれて

笑ったように眠るパパちゃんは

 

幸せそうにみえたんだ

 

 

「ありがとう。」

「だいすき。」

「またね。」

 

 

やっと

やっと

言えた

 

 

みんなに見送られる中、かけた音楽は

ゴッドファーザーのテーマ』

 

パパちゃんにぴったり(笑)

 

 

私だけが霊柩車の助手席に

パパちゃんの遺影を抱いて乗り込み

あとはみんなそれぞれの車で火葬場へ向かう。

 

運転手は最初の打ち合わせの時に来てくれた男性のスタッフ。

 

気遣いながら、時折声をかけてくれた。

 

 

途中、パパちゃんと二人で住んでいた近くを通った。

 

遺影を窓側に向け見えるようにした。

 

「懐かしいね、家の近くだよ」

話しかけながら、進んでいく。

 

 

火葬場は遠い。

 

 

パパちゃんと走る最期のドライブをかみしめながら

 

胃がんからの家族葬~別れの日~

ポカポカ陽気

暖かい春の日

 

寒いのが苦手なパパちゃんのために

お日様まで味方してくれたよう

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~葬儀の日~

朝ごはんの後、身支度を整え、部屋を片付け、準備はOK。

 

お経はパパちゃんの知り合いの方にお願いしていた。

 

縁もゆかりもない方よりも、生前お世話になっていた方の方がパパちゃんも喜ぶと思ったから。

 

この方は何かにかけて、パパちゃんを気遣ってくれた優しい方。

大柄な方だが、とっても美しい字を書かれる。

闘病中のパパちゃんに、何度も手紙を書いてくれていた。

 

今も、大事にとってある。

 

別室の、通常はお坊さんが待機される部屋にお通ししたと、係の人から聞き挨拶に伺った。

 

お礼を伝えパパちゃんのところへ案内する。

合掌をしパパちゃんとご対面すると

「眠っているみたい。キレイな顔ですね」と泣き笑いの顔で言われた。

 

その後、みんなでお経を唱える。

 

 

どうか安らかに

迷うことのないよう

旅立っていけますように

 

 

心の中で精いっぱいの感謝をこめて

 

 

姉妹が仲たがいをすることを何より心配していたパパちゃん。

 

子どもが全員そろっていることに安心してくれているかな

 

大丈夫だよ

 

ずっとずっと仲良しでいるからね

 

 

きっとパパちゃんが望むことは、それだけ

 

 

向こうで、お迎えが来ているよ

 

可愛がっていたニャンコもわんこも

なんだかんだ文句を言いながらママちゃんも(笑)

 

みんなでパパちゃんが来るのを待っているから

 

寂しくないからね

 

 

こちらの時間は

向こうでは『あっという間』だと聞いたことがある

ホントかいな

 

私が行くのも『あっという間』かもね

 

また私のお話、たくさん聞いてね

 

 

 

今だけ、ちょっとの間だけ

さようなら