癌と共に~フーテンのパパちゃん~

大好きな父が癌になりました。クジラを見に行く日を夢見て🌈

胃がんからの在宅医療~あと、1日~

どんなに残酷なことを言われても

 

信じないよ

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-お昼 12時前-

新しい介護ベッドに横たわり

点滴も注入量を増やしてもらったパパちゃん

ようやくすやすやと眠り出した。

 

バタバタと人の出入りも慌ただしい中

帰ろうとしない義父母。

 

「今日はすみません、わざわざありがとうございました。

もう大丈夫なので。また後で連絡します」

『帰れよ』をやわらかく変換して言っているのだが

さすが地球外生命体、通じない。

一向に帰ろうとしないので

時間をおいて、3回ほど言ったが無理だった。

 

診察した後に話があるはず。

それを聞かれたくないのだが

向こうも意地で聞こうと

ギラギラと先生の動きを監視して帰らない。

 

そんな中、駆け付けてくれた従兄が

たばこを吸いに立ち上がるのが見えた。

すると間髪入れず義父母が

『あらあら遠くから来てもらってたのに、すみませんねぇ。

気を付けて帰ってくださいね~』とのたまっていた。

 

『えっ・・・』と言ったまま固まる従兄。

とてもとても大人しく控えめな従兄は反論もできず

黙って荷物を取りに行き、玄関から出ていこうとしていた。

 

私は先生と看護師さんとパパちゃんの側にいたのだが

長女に任せて慌てて追いかけた。

 

家の外で車まで歩いて行っていた従兄を必死で呼び止める。

 

「兄ちゃん!!!」

「あぁ私お邪魔したらいかんから、帰るね」

「帰ったらいかん!!!あの人達は関係ない。

父がおってほしいのは兄ちゃんだよ。

それにもうすぐ小さい兄ちゃん来るのに、おらんかったらだめやん!」

 

従兄には、弟さんと妹さんもいる。

二人とも子どものころからパパちゃんが可愛がっていた。

弟さんには朝から連絡を入れ、仕事先からこっちに向かってもらっていた。

妹さんは運転ができず、ご主人も仕事の都合がつかず来ることが厳しかった。

 

そんな状況も何も知らないくせに

自分たちが主導権を勝手に握り

従兄を追い出そうとする義父母の態度に心底腹がたった。

 

「本当に申し訳ない。今まで父もずっとひどい目にあってきてるんよ。

だから知らん顔して構わない。何言われても、私に言われた、って言って」

 

従兄は気が弱く、トラブルがとても苦手な優しい人だ。

迷った様子だったが、私の必死な様子に

「わかった、じゃもう少しおらせてもらうね」

と言ってくれた。

 

よかった

 

あんのクソババアクソジジイ

この時は

父の状態の悪化に対する戸惑いや悲しさよりも

怒りの方が強かった

 

ちょうど一服終わった従兄が戻った時

先生がリビングに来られた。

「今、薬を倍にしています。一気に悪化しています。

おそらく・・・今晩でしょう」

 

ん?今晩?

昨日1週間って言ったのに???

 

またもや理解不可能だ

 

頭が追い付かない私は

「あの・・・それはよくいう

『今晩が峠です』みたいなもんですか」

とアホ全開な質問をした。

 

「はい」と静かに答える先生。

 

重ねて、尋ねた。

「危篤って事ですか」

 

「はい」

 

どういうこと?

 

だって意味がわからない

 

先月あと3か月て言われて

昨日あと1週間て言われて

それで今日は今晩て

 

どう考えてもオカシイやろ

計算合わん

 

大体おとといまで

風呂入ってご飯食べてた人が

そんなカンタンに逝ってしまうハズがない

 

先生に言いたいことは山ほどあったが

さすがに言えず

 

頭の中で回線がショートしたように

ぼおっ―としていた。

 

冷静になれば先生の言われることはもっともで

余命にしてもおおよそのあくまで目安

体調にしても悪化しているのは一目瞭然だ

 

だが信じたくない気持ちの方が強すぎて

この時は

「先生の診たては間違っている」という

トンデモナイ結論になっていた。

 

よしよし

それなら明日も元気で

先生に診てもらおう

 

そんなことまで考えていた。

 

私、ばかだったんだな・・・