癌と共に~フーテンのパパちゃん~

大好きな父が癌になりました。クジラを見に行く日を夢見て🌈

胃がんからの在宅医療~最期の挨拶~

ゆっくりと

ゆっくりと

 

ろうそくの炎が消えるかのように

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深夜を過ぎ、子どもたちもそれぞれ2階の寝室で眠っていた。

 

パパちゃんの側には私達3姉妹。

 

1度だけ、ガバッと起き上がって驚いた。

本当に、突然。

しかも手すりも何も使わず起き上がった。

左側の窓の方を向いて、何かを見つめているような感じで

 

慌てて体を支える。

ゆっくりとまた力が抜け、横になった。

 

何だったのだろう

 

それからはまた、眠り姫だった。

 

イビキをかいていたぱぱちゃんが、静かになった。

よくよく見ていると・・・呼吸が止まっている⁉

3人でアワアワしていると、しばらくしてまた「ふー」と息をする。

 

私たちも「はぁ~」と安堵。

だが気づけば、無呼吸状態が増えていた。

 

前述にある通り、灯火が消える前の呼吸

 

だが私達もこの状態がどれぐらい続くのか分からず、ただヒヤヒヤし続けた。

そして呼吸が戻るとホッとする。

そんな状態が続いた。

 

この時に急いで子供達を呼んでおくべきだった。

 

そんな時、突然パパちゃんがぱちりと目を開けた。

ええええええ!!!!

それまで声をかけて目を開けても、焦点の合わない、ぼーっとした感じだったのに

ハッキリとした表情だった。

「パパちゃん!わかる⁉お姉ちゃんたちもいるよ!!!」

するとパパちゃんはいつものキョトンとした表情で

長女、次女、私の顔を見回し、うん、うん、と頷いた。

 

本当にいつもと変わらない、パパちゃんだった

そして、また眠りに入った。

 

後にして思えば

パパちゃんの

最期の挨拶だった

 

そして、呼吸が段々と止まっている時間が長くなってきた。

 

看護師さんに連絡をして状態を伝える。

『苦しんでおられますか』

「いいえ」

『ではそのままご家族で看取られてください』

 

あまりに目を離せず、2階にいる子どもたちに声が届かない

 

そして

ふーと静かに息をはいたパパちゃん

 

戻れ、戻れ、と呼吸をまつ私たちの願いも届かず

 

パパちゃんは静かに

そのまま旅立ってしまった。

 

「どうしよう、パパちゃんの心臓が動いてない」

泣きながら次女が言う

 

 

 

逝ってしまった

 

本当に

 

私たちのパパちゃん

 

 

 

言えてないよ

ありがとうも

大好きも

 

 

待ってという言葉しか出てこなかった