癌と共に~フーテンのパパちゃん~

大好きな父が癌になりました。クジラを見に行く日を夢見て🌈

胃がんからの旅立ち~パパちゃんのいない夜~

目を開けても

あの背中が見える

 

目を閉じても

低く呼ぶ声が聞こえてくる

 

ぽっかりと開いた和室の向こうには

パパちゃんの笑顔

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~葬儀の後~

精進揚げも終わり、気づけば夜だった。

 

「あんたも頑張ったね。疲れたろ。ゆっくりお休み」

姉たちも気遣ってくれ、パパちゃんへお線香をあげてからそれぞれの家に帰っていった。

 

ひとまずお風呂に入り、その日は早くにみんな2階へ。

 

私は一人和室で、ぽつんと残っている介護ベッドに腰かけた。

 

「せっかく取り寄せたのに、2日間しか寝れなかったね」

 

『おぉ。もう少し使ってみたかったな』

 

「昨日からずっとバタバタだったから、くたびれたろ」

 

『うん。俺はなんもしとらんのだけどな』

 

「明日からはね、みんなお休みよ」

 

『お前もゆっくりできるな。・・・おい、アイスはあるか』

 

 

冷蔵庫に行き、いつもパパちゃんが食べていたアイスを食べる。

ドールのフルーツバー。

これがお気に入りだった。

 

しゃりしゃりしゃり。

 

おいしいなぁ

 

 

ぼんやりとパパちゃんの写真をながめながら

そのまま布団を持ってきて、横になった。

 

2階に、行きたくなかった

 

パパちゃんの側に、いたかった

 

 

この数日間を振り返って考える。

 

よくやった

私なりに

精いっぱい

 

それでもパパちゃんへは足りないことばかりが思い出される。

 

もっと美味しいものを食べさせたかった

いろんな所へ連れて行ってあげたかった

たくさんの人に会わせておけばよかった

もっと話をしたかった

 

たくさんのもっともっとを考えながら

それでも朝起きたら全部夢だったらいいのにと思いながら

眠った。