目を開けても
あの背中が見える
目を閉じても
低く呼ぶ声が聞こえてくる
ぽっかりと開いた和室の向こうには
パパちゃんの笑顔
~葬儀の後~
精進揚げも終わり、気づけば夜だった。
「あんたも頑張ったね。疲れたろ。ゆっくりお休み」
姉たちも気遣ってくれ、パパちゃんへお線香をあげてからそれぞれの家に帰っていった。
ひとまずお風呂に入り、その日は早くにみんな2階へ。
私は一人和室で、ぽつんと残っている介護ベッドに腰かけた。
「せっかく取り寄せたのに、2日間しか寝れなかったね」
『おぉ。もう少し使ってみたかったな』
「昨日からずっとバタバタだったから、くたびれたろ」
『うん。俺はなんもしとらんのだけどな』
「明日からはね、みんなお休みよ」
『お前もゆっくりできるな。・・・おい、アイスはあるか』
冷蔵庫に行き、いつもパパちゃんが食べていたアイスを食べる。
ドールのフルーツバー。
これがお気に入りだった。
しゃりしゃりしゃり。
おいしいなぁ
ぼんやりとパパちゃんの写真をながめながら
そのまま布団を持ってきて、横になった。
2階に、行きたくなかった
パパちゃんの側に、いたかった
この数日間を振り返って考える。
よくやった
私なりに
精いっぱい
それでもパパちゃんへは足りないことばかりが思い出される。
もっと美味しいものを食べさせたかった
いろんな所へ連れて行ってあげたかった
たくさんの人に会わせておけばよかった
もっと話をしたかった
たくさんのもっともっとを考えながら
それでも朝起きたら全部夢だったらいいのにと思いながら
眠った。