忘れないよ
笑顔も
優しさも
温もりも
どうにかこうにか打ち合わせも終わってから
パパちゃんの身体を守るため、ドライアイスを設置することになった。
お天気の良い春の日だったので、斎場に入る前に自宅でと、早めにお願いをしていた。
担当者の方が
「背中の方へ、手を入れてみてください。まだ故人様の温もりが感じられますので」
と言われ、驚いた。
もうだいぶ時間は経っている。
でもそうっと背中の方へ手を入れると、温かさが伝わってきた。
パパちゃんの、最後のぬくもりだ
次女も、子どもたちも、それぞれに確かめながら
涙が止まらなかった。
あの時の感触は、きっとずっと忘れられない
それほどパパちゃんを感じられるものだった
真っ白なお布団を上からかける。
重い布団はきらいだったものね。
「一応、持ってきました」と言われた装束セットの中に
経帷子(白装束)と手に付ける手甲、足に着ける脚絆、そして三角頭巾があった。
(う~ら~め~し~や~と幽霊がよくつけてるやつ)
天冠(てんかん)とも言うらしい。
実際これ付ける人いるのだろうか・・・(;・∀・)
死装束にも、それぞれ意味がある。
閻魔大王様の前に出る時の正装だとか。
今は《エンディング(エピローグ)ドレス》なるものもある(゚д゚)
いや、すごいね(;'∀')
でも自分でお気に入りの服を着たいというのは分かる。
この先それを着て向こうへ旅していくのだから。
いつも釣りに来ていた服を身に着けたパパちゃんは
今にも起き出しそうだ。
温かさを感じていると、「もしかしたら・・・」と勘違いしそうになるくらい
優しい穏やかなパパちゃんが横になっている。
長女だけがまだ戻って来ておらず、やきもきした。
かと言って運転中であろう、電話もできず。
諦めかけてドライアイスをセットしていたその時、
長女が帰ってきた!
セーフ。
長女もパパちゃんの温かさを感じながら
「お父さーん・・・」と
『起きてよ』と言わんばかりにつぶやいていた。